相続登記申請書の書き方
相続財産(遺産)に不動産が含まれるときには、不動産の名義変更をする必要があります。この手続きを「相続登記」といいます。
2024年4月1日からは、相続登記が義務化されるため、不動産を持っている方が亡くなった場合には、亡くなってから3年以内に必ず相続登記をしなければいけません。
相続登記を行うときには、「相続登記申請書」を作成しなければなりません。法務局のHPにも記載例がありますが、より分かりやすく相続専門のイーライフ相続登記が司法書士監修の上で解説します。
法務局の記載例はこちら
不動産登記の申請書様式について(法務局ホームページ)
甲斐 麻莉子(司法書士)
申請書を作成するための前準備
相続登記申請書を一から作成するためには、以下のことに注意する必要があります。
まず、相続登記申請書の書式を法務局や役所でもらうことはできません。
準備をせずに法務局にいっても、相続登記申請書をその場で作って、名義変更をすることはできませんので、ご注意ください。登記申請書は法務局ホームページからダウンロードするか、A4の用紙に記入をして、用意をする必要があります。
完成した相続登記申請書は、法務局に提出後、30年間保管 されます。手書きの場合は、消えないボールペンや万年筆を使いましょう。
また、登記申請書の「申請人」の欄には印鑑を押す必要があります。印鑑は、実印でなくてよく、認印で足ります。改ざん、変成が容易なシャチハタやゴム印は、法務局に提出する書類にはふさわしくありませんので、必ず、朱肉を使うタイプの印鑑をお使いください。
登記申請書に住所や氏名、相続分の誤りがあると、間違ったまま登記がされてしまう恐れがあります。
不動産の売却をお急ぎの方、自分でできるか自信のない方は、イーライフ相続登記にご相談ください。
「相続登記申請書」を法務局でもらうことはできない
あらかじめ準備をし、必要書類を揃えてから、法務局に提出する。
「申請書」は、A4の紙にwordまたは手書きで作成する。
「申請書」に押すハンコは認印でよい。
住所や名前の間違いは、そのまま登記簿に記載されてしまう危険がある。
相続登記申請書には、遺産を相続する人と、元々の不動産名義人である人(=お亡くなりになった方)の関係、住所・氏名、不動産の地番を、戸籍と同じく正確に書かなければいけません。
相続登記申請書の作成]
相続登記申請書を相続人自身で作るときには、登記のときにしか使わない専門用語がでてきます。しかし、難しい用語や不動産登記法を覚える必要はありません。いくつかのパターンから、組み合わせて申請書を作成していただくことができます。
相続登記申請書の書き方について、順に解説していきます。
相続登記申請書の書式・ひな形のサンプルは、一般的な相続の作成例であり、個別に相談者の状況に応じて作成したものではありません。
それぞれのご家族の状況、財産の状況に応じて、サンプルを修正して利用して頂く必要があります。
相続登記にお悩みの方は、申請書を自動作成できるイーライフ相続登記にご相談ください。
★不動産の名義人であった田中父男が亡くなり、妻の田中母子と、娘の田中娘子が1/2ずつ名義を取得するとき。
不動産登記申請書
登記の目的 所有権移転
原 因 令和4年1月1日
相 続 人 (被相続人 田中父男)
○○市○○町一丁目1番地 持分2分の1 田中長女子
○○市○○町一丁目1番地 持分2分の1 田中母子
申請人 ○○市○○町一丁目1番地 田中長女子 (認印)
連絡先の電話番号 XX-XXXX-XXXX
○○市○○町一丁目1番地 田中母子 (認印)
連絡先の電話番号 XX-XXXX-XXXX
添付書類 登記原因情報 住所証明情報
送付の方法により登記完了証の交付及び添付書類の原本還付を希望します。
送付の方法により登記識別情報通知の交付を希望します。送付先は申請人の住所
令和4年2月2日申請 東京法務局 御中
課税価格 金4,000,000円
登録免許税 金16,000円
不動産の表示
不動産番号 0100XXXXXXXXX
所 在 東京都中央区銀座二丁目
地 番 X番X
地 目 宅地
地 積 50.00㎡
それでは実際に、申請書を作ってみましょう。
一番上は「不動産登記申請書」で同じです。
登記の目的
相続登記申請書のうち、「登記の目的」の欄に記載すべき事項は、3パターンあります。
相続によって不動産の名義が変わること
=被相続人(亡くなった方)の相続不動産の所有権や持分権が、相続する人に移転すること
と思って、あなたの相続した不動産の場合はどのパターンに当たるかを見てみてください。
★亡くなった方(いま不動産の名義人)の名前が「田中父郎」だった場合の、「目的」部分の記載例
パターン①
相続不動産の唯一の持ち主だった →、「目的」の記載は 【所有権移転】 となります。
パターン②
相続不動産を他に共有している持ち主がいた→【田中父郎持分全部移転】 となります。
パターン③
ある相続不動産の唯一の持ち主だったが、他の不動産はほかに共有している持ち主がいた(①と②の合わせ型)→【所有権及び田中父郎持分全部移転】となります。
原因
相続登記申請書の「原因」の欄には、不動産の名義変更が起きた理由の日付及び法律効果の発生原因を記載します。
したがって、「原因」の欄には、お亡くなりになった方(=現在の不動産の名義人)の戸籍に記載された死亡年月日及び「相続」、または「遺贈」の旨を書くことになります。
ただし、「遺贈」を登記原因として相続登記をできるのは、相続人に対する遺贈の場合のみです。相続ではない人に対して遺贈をする場合には、この記事に書かれている申請書の書式はお使いいただけませんのでご注意ください。
★亡くなった方(いま不動産の名義人)の名前が「田中父郎」だったとして、戸籍から確認できる死亡年月日が「令和4年1月1日」である場合の「原因」の記載例
「原因」令和4年1月1日相続
遺産分割協議や遺産調停、遺産を巡る裁判などによって、不動産を相続する人が決まった場合であっても、被相続人の死亡日が「原因」日付になります。
民法は、「遺産分割協議の効力が発生する日付は、相続開始時(=亡くなった日)にさかのぼる」と定めているためです。
相続人等
相続登記申請書の相続人等の記載欄に、被相続人と相続人についての情報を記載してください。
それぞれ、記載していただく情報は次のとおりです。戸籍謄本、住民票などの記載をもとに、一字一句間違えないよう正確に記載してください。
氏名や住所に難しい漢字がある、旧字体や異字体がある場合は、特に注意してください。
★不動産の名義人であった田中父男が亡くなり、妻の田中母子と、娘の田中娘子が1/2ずつ名義を取得するとき。
相 続 人 (被相続人 田中父男)
○○市○○町一丁目1番地 持分2分の1 田中長女子
○○市○○町一丁目1番地 持分2分の1 田中母子
持分割合は、遺産分割協議書を作成したときは、協議書の記載のとおりに、
法定相続分にしたがって不動産の名義変更をする場合には、法定相続分の通りに記載します。
相続した権利が、不動産の共有持分の場合には、相続人がひとりだけであっても、その相続人が相続する持分の割合を記載しなければなりません。
遺産分割協議書とは、遺産の分割方法について相続人全員の協議まとまった時に作成する書類です。遺産分割協議の内容を対外的に証明するために作成します。
添付書類
「添付書類」の欄には、相続登記申請書に添付する書類を記載します。
いわゆる「概括記載」ですので、実際には遺産分割協議書や戸籍を記載する場合でも、この欄に細かく記載する必要はありません。どのような相続登記の申請であっても、
「登記原因証明情報、住所証明情報」と記載します。
相続登記の際に具体的に必要となる書類については、後述する通りです。
原本還付の希望
相続登記申請書に添付した資料については、相続登記が終わったら返却してもらうことができます。このように、大切な書類の原本と一緒にコピーを法務局に提出して、登記の手続きが終わった後に、原本を返してもらうことを「原本還付」といいます。
相続登記の際に法務局に提出する戸籍や遺産分割協議書は、銀行預金の解約や生命保険の手続き、相続税の申告等にも必要になります。原本還付の申請をして、大切な書類が手元にもどってくるようにしましょう。
原本還付を希望するときは、「添付書類の原本を還付することを希望する旨」を記載した上で、
返却してもらいたい書類のコピーをとり、ホチキスで束ねます。コピーの束に、「この書類は原本に相違ありません。氏名」と記載して、認印で押印、割印をしたものを、原本と一緒に法務局に提出することで、原本は法務局の手続きをした後に返却してもらうことができます。
登記完了証の交付の希望
相続登記申請書を提出して相続登記が完了すると、「登記完了証」を受け取ることができます。
登記完了証とは、相続登記が終了したことを、申請者に知らせるための書面のことです。相続登記申請書に、登記完了証を希望することと、その送付先の希望について記載します。
登記完了証は、窓口で受け取ることが原則であり、郵送を希望するときは、その旨を相続登記申請書に記載しておかなければなりません。
登記識別情報通知書の交付の希望
相続登記が完了すると、登記完了証とともに、登記識別情報の通知の交付を受けることができます。
登記識別情報とは、12ケタの数字とアルファベットを組み合わせた暗証番号で、「権利証」に代わる重要なパスワードです。平成20年以前は「不動産権利証」が交付され、それ以降はオンライン化に伴い「登記識別情報」が発行されるようになりました。
「登記識別情報を知っていること=不動産の権利者」としてみなされますので、交付された後は、金庫等で大切に保管することをお勧めします
登記識別情報通知書は、不動産を今後売却したり、ローンを設定する際に必要になります。
申請日・ 宛先
相続登記申請書の申請日は、法務局の窓口に提出する日付を記載します。
登記の申請書が法務局に到着した日付が登記の申請日となります。
申請日に「令和4年1月1日申請」と記載し、法務局に提出・到着した日付が「令和4年1月4日」の場合には、「令和4年1月4日が申請日」として処理されます。
課税価格・登録免許税
相続登記の申請をする際には、相続不動産の課税価格及び登録免許税を記載します。登録免許税は、収入印紙を貼って、法務局に納付する必要があります。
課税価格とは、固定資産税通知書や固定資産評価証明書に不動産の「価格」として記載された、登録免許税の計算の基準となる額です。
登録免許税とは、不動産を登記するときにかかる税金のことで、課税価格に0.4%または2%をかけた額です。
登録免許税額は、以下の通り計算します。
① 相続不動産の新しく名義人になる人が、現在の名義人の相続人であるとき・・・0.4%
② 相続不動産の新しく名義人になる人が、現在の名義人の相続人以外であるとき・・・2%
不動産の表示
最後に、不動産を特定するための情報を正確に、相続登記申請書に書き写します。具体的には、不動産(土地・建物)の登記簿謄本を取得し、その中に書かれている情報を、相続登記申請書にも記載します。
不動産の表示とは、住所の表記とは異なり、法務局が管理する地番等のことです。不動産の表示が間違っている場合、登記申請自体を取り下げて、再度申請をしなければなりませんので、不動産の謄本を見て、書き間違いのないようにしましょう。
相続登記申請書の提出先
相続登記申請書に必要事項を記載し、必要な書類がそろったら、管轄の法務局に提出することで申請が完了します。
相続登記の申請をする際は、その相続財産(遺産)の不動産の所在地を管轄する法務局に対して、申請書を提出しなければなりません。
もし間違えた法務局に申請書を提出すると、その申請は「却下」または「取り下げ」となってしまいます。管轄法務局は、法務局のホームページから確認することができます。
相続不動産の名義変更を申請する法務局の管轄一覧はこちら★
登記管轄一覧表・供託所一覧表:法務局 (moj.go.jp)
相続登記の申請は、インターネット上のオンラインで行うこともできます。しかし、個人の方が不動産登記の申請手続きをするときには、法務局に直接、または郵送で申請することをおすすめします。
ほとんど全ての司法書士が、司法書士専用のソフトウェアを使ったオンライン申請を行っていますが、個人の方がオンライン申請をする際には、下記のようなデメリットがあります。
相続の登記申請をする際には、郵送または窓口での申請をおすすめします。
オンラインで相続登記の申請をするデメリット
① オンライン申請をしても、戸籍や遺産分割協議書は別途、郵送で提出する必要がある。
② 申請をする人の、電子署名と、電子署名専用のパスワードが必要
③ パソコン環境によっては、ソフトのダウンロードが困難なことがある。
④ 間違いがあった場合、訂正も必ずオンラインでしなければならない。
⑤ せっかくダウンロードをしても、一度しか使わない。
相続登記申請書の添付書類
上記で、相続不動産の名義変更のための登記申請書が完成しました。
次に、「添付書類」で記載した、登記原因証明情報と住所証明情報として、具体的に添付する書類は何かを説明します。
申請書を作ることは、この記事を見ていただけばそう難しくありません。しかし、相続登記に必要な書類一式をそろえるためには、場合分けをして必要書類を理解する必要がありますので、ご注意ください。
登記原因証明情報として提出する書類
① 相続が起きたことを証明する戸籍等 及び
② 財産の分け方が分かる遺産分割協議書、遺言書など
住所証明情報として提出する書類
① 相続不動産を取得する人の住所が分かる住民票、戸籍の附票又は印鑑証明書
また、相続不動産の評価額がわかるよう、固定資産税の評価証明書、固定資産税通知書のコピー等も添付する必要があります。これはどの相続登記であっても必要な書類ですので、覚えておきましょう。
遺言書により相続する場合
遺言書がある場合には、遺言書に指定された分け方で、相続不動産の名義変更を行うことになります。遺言書が存在するときの添付書類は次のとおりです。
また、相続登記をすることができる遺言書は、公正証書遺言、家庭裁判所で検認された自筆証書遺言、法務局の自筆証書遺言保管制度を利用した遺言です。
手書きで書かれ、家庭裁判所の検認を受けていない遺言は、相続登記に用いることはできません。
遺言書が存在するときの添付書類
①遺言
②遺言を書いた人が亡くなったことがわかる戸籍謄本
③不動産を相続する人の戸籍謄本
住所証明情報として
• 住民票、戸籍の附票又は印鑑証明書
遺言書がない場合で、遺産分割協議書がある場合
遺言書がない場合、相続人全員が話し合いによって財産の分け方を決めます。話し合い(=遺産分割協議)を記載した結果を記載した書類を、遺産分割協議書といいます。
遺産分割協議書が存在するときは、相続登記申請書の添付書類は次のとおりです。
遺産分割協議書が存在する場合の添付書類
登記原因証明情報として
①遺産分割協議書(相続人全員の実印が押されたもの)
②亡くなった不動産登記名義人の出生から死亡までの戸籍謄本
③相続人全員の現在の戸籍謄本
住所証明情報として
• 住民票、戸籍の附票又は印鑑証明書
遺言書も遺産分割協議書もない場合
亡くなった方の相続人全員に、法定相続分通りで登記をする場合や相続人が一人しかおらず、その相続人の名義を変更する場合には、遺言や遺産分割協議書なく相続登記申請を行うことができます。
遺言書も遺産分割協議書もない場合の添付書類
登記原因証明情報として
①亡くなった不動産登記名義人の出生から死亡までの戸籍謄本
②相続人全員の現在の戸籍謄本
住所証明情報として
• 住民票、戸籍の附票又は印鑑証明書
いかがでしたでしょうか?
相続不動産を確実に入手しするためには、不動産の登記名義を変更する必要があり、令和5年度からは義務化がされます。
相続登記は司法書士に依頼しなくても、自分でも行うことができますが、ルールが多岐に亘るのも事実です。
イーライフ相続登記は今回開設した相続登記申請書の作成方法のノウハウを全て詰め込み簡単に手続きができるサービスですので、確実にコストを抑えて手続きを行いたい方は是非ご相談ください。