2024年相続登記義務化!不動産の名義変更をしないデメリット

2023年11月15日

相続には、相続手続きの種類によって、期限があったり、義務となっていたりするものがあります。例えば、相続税の申告・納付は相続開始から10カ月以内に行わなければならず、相続放棄の申述は相続開始を知ってから3カ月以内に行わなければなりません。
相続登記はこれまでは義務ではありませんでしたが、令和6年4月1日より義務化され、過料が課されることが決定しました。先祖代々の土地で売る予定がないから・・・と相続登記をしていなかった場合でも、この法改正によって登記をしなければならないことになりました。
相続登記手続きに詳しい司法書士が、相続登記の義務化と、登記をしないデメリットについて説明します。

甲斐 麻莉子(司法書士)

相続登記はなぜ義務化された?

「不動産の登記」とは、そもそもなんなのでしょう。
これは、法務局に保管されている「不動産登記簿」に対して、その不動産が誰の所有するものかを記録して、国が管理しているものです。
所有権だけではなく、事業用の賃借権や、住宅ローンの抵当権、事業用の根抵当権等についても記録されます。その記録を見れば、「不動産を誰が所有していて、どういった法律関係になっているか」が分かるのです。
この登記簿は、「所有者や抵当権者の本人、または委任を受けた司法書士が申請をすることによって」記録されます。つまり、登記を申請しない以上は、相続が発生しても、亡くなった方のままの名義になっていることがよくあるのです。
相続による不動産登記をしなくても、売却したり、担保にすることなく住み続けるのであれば、名義を変更しなくても日常生活では困りませんでした。
ではなぜ、令和6年4月からはその登記が義務化されるのでしょうか。

国のための相続登記義務化?土地所有者不明問題について

国土交通省の地籍調査によると、国土の20%の土地所有者が不明であると言われています。これは登記が長年放置されて、不動産の現在の名義人が明らかに亡くなっているだろう、という場合も含みます。
登記簿をみて所有者が不明のままでは、国や企業がその土地を活用することができません。例えば公共事業のための活用、再開発のための土地収用、災害対策のための工事などがあげられます。
国とはいえ勝手に人の土地を使ったり、工事をすることはできず、必ず所有者のコンタクトをとる必要があります。そのため、法務局が管理する登記簿で、現在の所有者を確認できなければ、国や事業者が困るのです。

相続登記の義務化の内容は?

相続による名義変更の義務化の内容について、解説します。

• 相続登記は3年以内に登記申請、怠った場合は10万円以下の過料
• 住所変更登記は2年以内に登記申請、怠った場合は5万円以下の過料

法務省ホームページ

相続による名義変更だけでなく、相続に関係ない住所変更登記についても併せて義務化されましたので、ご注意ください。

相続登記をしないメリットがあった?

相続登記(相続不動産の名義変更)をしないメリットとして、相続登記に必要となる費用、司法書士報酬などがかからない点があげられました。相続の際には、他にも多くの専門家士業の報酬や、手続費用がかかるため、「どうせ義務でないなら節約したい」というわけです。
次のケースでは、相続登記をしないことで費用を節約できるメリットは大きかったといえるでしょう。

たとえば・・・
おじい様がお亡くなりになり、相続人が、お父様のみ、相続財産が自宅不動産のみだったとします。
この場合に、おじい様所有の自宅不動産を、お父様が相続します。このときに相続登記をしなくても、その後にお父様がお亡くなりになった場合、お母様と孫であるあなたが不動産の全てを相続しますから、そのときに相続登記をすれば同じことです。
しかし、この例のように単純な事例ばかりではなく、実際には、相続登記をしないと、その後の大きなトラブルを招く原因となります。未来の相続関係は予想できませんから、リスクを回避するためにも、相続が発生するごとに相続登記することをお勧めします。

相続登記(相続不動産の名義変更)をせず放置するデメリットは?

「相続登記の義務化」以外にも、相続登記を放置するデメリットがあります。
今回解説するデメリットはとても大きく、弁護士のもとにも相続紛争の相談が多く寄せられます。
「相続登記義務化」による10万円以下の過料が課されるリスクよりも、以下に述べるデメリットの方がはるかに大きいといえるでしょう。
相続が発生して手続きで迷っている方、これから相続を迎える可能性がある方は、ぜひ確認してみてください。

【デメリット①】家族構成が変わり、複雑化する

相続登記をしないまま放置しておくと、時間の経過のうちに家族構成や状況は変わるものです。
遺言がなく遺産分割協議をしていない場合、相続した不動産は故人の名義となり、その所有権は、相続人間の共有となります。この状態で、相続人のうちの誰かがお亡くなりになると、さらに相続人の相続人が共有者に加わることとなり、不動産の共有者が増えていきます。中には未成年が相続人になったり、代襲相続が起きたりするうちに、親族でも把握しきれない相続関係となってしまうのです。
その結果、後から相続登記をしようとしたときには、権利関係が複雑化していて、訴訟によって手続きを進める必要がでてくる場合もあります。。

【デメリット②】相続人が認知症になる

相続登記を放置していた結果、共同相続人の1人が、認知症になったり、病気で寝たきりになる可能性がままあります。認知症になると判断能力が低下する結果、法的に有効な意思表示ができないとみなされます。
認知症になってしまった人がいる場合には、相続登記をするために新たに遺産分割協議をするときには、その人には成年後見人または特別代理人を選任し、代わりに意思表示をしてもらう必要があります。
また、認知症になってしまった相続人に、既に成年後見人がついていたとしても、その成年後見人もまた共同相続人の場合には利益相反が生じますので、成年後見監督人、もしくは、特別代理人の選任が、新たに必要となり、更に手間がかかるデメリットがあります。
成年後見人の申立て、選任だけでも、家庭裁判所の手続で数か月の期間を要するため、元気なうちに相続登記をせず放置していたことのデメリットはとても大きいです。

注意ポイント

相続人の一人が認知症となった後に遺産分割の手続きをするためには、成年後見人の選任または特別代理人の選任が必要となります。いずれも家庭裁判所への申し立てによることが原則で、いずれも認知症になった人の法律上の権利擁護のために働く人です。

そのため、最低でも法定相続分は被後見人が取得するように遺産分割協議を調整することになる可能性が高く、家族間での柔軟な解決が難しくなる可能性があります。

【デメリット③】相続人の気持ちが変化する

相続登記を放置したまま、相続不動産の名義を故人のもののままにしておいた場合に、あとから相続登記をしようとしたときには、他の相続人の気が変わっていた、ということもあります。
例えば一家の父親がなくなったケースで、母親と長男長女がいたとします。
長男は、最初のころは残された母親と同居している長女が相続不動産を取得することに同意していたとしても、長い時間が経過し、いざ相続登記を進めようというときには、経済状況が悪化していたり、長男の子の進学費用が必要になっていた等の理由で、不動産の所有権を主張する可能性があります。
これはよくあることで、遺産分割協議をやり直さなければならないけれども、期間の経過によって当時の状況から変化しているために、遺産分割協議が円満にまとまらなくなってしまいます。

特に、「デメリット①」でも解説したとおり、相続登記までにかかる期間が長くなればなるほど、共有者が増え、後日の相続登記に反対の意思を示す人が増える可能性があります。同意を得たり、押印や印鑑証明書をもらうことがますます難しくなっていくのです。

【デメリット④】勝手に相続登記される

相続登記をするための必要書類として、遺言が存在するか、もしくは、遺言が存在しない場合には遺産分割協議の結果を記載した遺産分割協議書が必要です。しかし、法定相続分であれば、これらの書類がなくても、相続人のうちの一人から法定相続の割合で相続登記をすることができます。
民法改正によって、遺産分割協議で取得した不動産でも、相続登記をしていない場合には、法定相続分を超える部分を第三者に対抗することができません。したがって、他の相続人に勝手に登記をされ、その持ち分に抵当権を設定されてしまった場合には、不動産をめぐる紛争が始まり、解決には長い年月を必要とする可能性があります。

【デメリット⑤】相続人が行方不明になる

相続登記をせずに放置しておいた期間中に、相続人の一部が行方不明になってしまうことがあります。
行方不明者がいる場合には、まず、住民票、戸籍の附票、戸籍謄本を取得することで、行方不明者の現在の住所地を特定し、手紙を送ったり訪問したりして、連絡を取る努力をしなければなりません。
行方不明だけれども生きていることが明らかな場合には、家庭裁判所の手続で不在者財産管理人を選任しますが、この手続きにも数か月の期間を要します。
行方不明であり、生死もわからない場合には、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをすることをして、「行方不明者は亡くなった」として手続きをすることになります。この場合には、「行方不明になってから7年経過」または、「震災等によって生死不明になってから1年経過」をする必要があり、長期間待たなければなりません。
また、相続人の相続人がいない場合も、家庭裁判所の相続財産管理人選任の手続きをする必要があります。この場合も同様に、その相続人の法定相続分の財産を引き渡すことになります。
以上のように、長年放置すればするほど「行方不明者がでる」というリスクが増大していきます。

【デメリット⑥】登録免許税が高額になる可能性がある

相続による名義変更をする際には、法務局に対して「登録免許税」を納付する必要があります。これは、固定資産税評価証明書や納税通知書に記載された金額のうち、「不動産の価格」に相当する部分に1000分の4を乗じた金額を収めるのが原則です。
この金額は、毎年変動するため、上がったり下がったりして、予想をすることは困難です。
ご資産が多い場合には、登録免許税だけで数十万円~数百万円になることも珍しくありません。1000分の4を乗じるとはいえ、長年放置している間に登録免許税が高額化する可能性はあります。
「登録免許税がもったいないから、相続登記はしないでおこう」と思っていて、いざ登記が必要になったときに、最初より高額になっていては本末転倒です。

【デメリット⑦】相続不動産を売却・担保にできない

相続した不動産を売却したり、借金の担保にして抵当権を付するためには、相続登記をして正しい名義に変更しておく必要があります。相続登記をしなければ、売却、担保にできません。

急ぎで現金が必要になった場合や、認知症になる前に不動産を売却しようと思っていても、相続登記には最短でも1~2か月はかかるのが一般的ですから、すぐに売却をすることが難しくなります。

もっとくわしく!

被相続人の死亡前(つまり、相続開始前)に、既に売買契約が成立しており不動産が売却されていた場合には、相続登記をすることなく、買主と相続人全員による共同申請による名義変更手続きが可能です。

【デメリット⑧】相続不動産の差押えを受ける

相続した不動産の名義変更をせずに放置していた間に、共同相続人のうちの1人が借金をした場合、その借金のカタとして、相続不動産が差押えを受けてしまうことがあります。相続登記をしていない間は、相続不動産は共有状態だからです。
共有状態のとき、相続人はそれぞれ、法定相続分の割合に応じた共有持分を持っていることとなりますが、相続人の債権者は、この法定相続分の割合に応じた共有持分に対して、差押えの登記をすることができます。
その結果、たとえ自分に借金がなくても、共同相続人の誰かが借金をしていると、その人の持分相当分が差し押さえられて売却をされてしまうことがあります。この場合には、その持分を購入した人が、あらたに共有者に加わることとなります。

【デメリット⑨】不動産賠償を受けられない

不動産賠償とは、不動産(土地・建物)が、第三者の不法行為や債務不履行などによって損害を負ったときに、その賠償を請求する権利のことをいいます。
不動産賠償によって被害を受けるのは、不動産の所有者です。そのため、不動産賠償を受けるためには、その不動産を所有していることを証明する必要がありますが、相続登記がされておらず、不動産の登記上の名義人が故人のままだと、賠償を受けられないことがあります。
特に、2013年に起こった東日本大震災の原発事故の際に、東京電力が行う不動産賠償について、登記簿上の所有者を対象に行うこととしましたが、相続登記をせず放置していたために、この補償を受けることができなかったという例があります。

いかがでしたでしょうか?
不動産登記の義務化だけでなく、相続登記を放置しておくデメリットについてご理解いただけたのではないでしょうか。
相続登記の義務化は令和6年4月からですが、駆け込み登記が多くなると予想され、依頼を受けきれなくなる可能性もありますから、イーライフ相続登記や司法書士に依頼する場合は早めのご相談をおすすめします。