相続した不動産を名義変更する場合の最適な対応
相続した不動産を名義変更する際に選択できる方法
不動産の名義変更の申請を行い、登記変更手続きを行えるのは、法律上①本人、②司法書士です。
まずはその2つの選択肢のメリット、デメリットについて整理します。
なお、相続不動産の名義変更でどのような手続きを行うかについては、次のコラムでまとめています。
本人が申請する場合
費用が必要最小限に抑えられる
書類の発行手数料や郵送費、登録免許税等の実費しかかかりません。
全て自分で調べて対応する必要がある
書類の収集、申請書の作成、提出方法を全て調べて対応する必要があります。
最新の関連法制度を把握することが難しい
不動産や税金の法令はすぐに変わりますので、せっかく勉強しても古い情報であるケースがあります。
仕事をしながら手続きをすることが難しい
独学で申請書を作成して提出した場合は、ほぼ確実に修正連絡があり、何度も書類を訂正しなければなりません。法務局からの連絡はメールではなく、平日の日中に電話での口頭連絡なので、平日勤務の場合は仕事中に長時間対応する必要があります。
民法や登記法の勉強もかねて、自分で申請書を作成する方も増えています。
司法書士に依頼する場合
手続きを丸投げできる
戸籍の収集から申請書の作成、提出まで依頼でき手間が省ける。
費用が高い
不動産の数、相続人の数、不動産の価格によって報酬が上乗せされ、遺産分割協議書作成等の作成を依頼するとさらに高額になる。
手続きに時間がかかる
基本的に少人数で運営している事務所が多く、電話や対面でのコミュニケーションがメインです。また手作業で書類作成をするので手続き完了には3ヶ月位かかり、すぐに不動産を売却する場合は制約があります。
不動産登記というと司法書士に頼むことが一般的ですが、報酬は大体10-15万円です。
別の調査レポートを作成するために、相続した不動産の名義変更を司法書士に頼んだ人達にアンケートをとりましたが、約5割の人は報酬が高かったと答えています。
名義変更のWEBサービスを利用する
第3の選択肢として、不動産の名義変更のWEBサービスというものがあります。ITベンチャー企業が司法書士監修で開発したシステムです。
基本的に本人で申請書を作成して申請するのですが、不動産の名義変更に関する司法書士の知識ノウハウをシステムに詰め込んで、一般の人でも登記手続きが比較的簡単にできるというサービスです。
費用が安く済む
WEBサービスによって異なりますが、3-7万円で利用できます
手続きが早い
書類作成は1日かからず、書類収集から提出まで最短1ヶ月で完了します。
自分で申請する手間は残る
本人が申請するため、書類収集や提出の手間は残る。
なおWEBサービス会社は、司法書士に頼むと有料の遺産分割協議書作成も料金内で、司法書士の2/3から1/3の料金です。
費用を安くできるのはシステム化で書類作成に人手がかからない点にあります。一方で自動化できない戸籍収集や提出といった人的サービスも提供している会社はその分、料金が抑えられないという特徴があります。
こちらは独学で申請する自信はないけど、費用は極力抑えたい人にお勧めです。
代表的なWEBサービスは次の3社です。
イーライフ相続登記
最新の法改正に対応し、最安値。2022年11月より書類代理収集もパックになったプランを提供開始
better相続登記
税理士法人傘下のサービス。やや難解な記載があるが、低価格サービスの嚆矢
そうぞくドットコム不動産
WEBサービスでは料金が高めで、提出代行サービスが売り
イーライフ相続登記は当社が運営しているのでもちろんお勧めですが、是非比較検討をしてください。
タイプ別不動産の名義変更方法
相続した不動産を名後変更した場合に3つの選択肢がありますが、どの選択肢が良いかは人によって異なります。それぞれ選択肢の特徴に合わせて分類すると次のとおりになります。
不動産会社等である程度知識がある
相続するのが自分1人だけ
平日に自由な時間がとれ、何度でも修正対応が可能
名義変更に時間がかかっても問題がない
予算がある
名義変更に時間がかかっても問題がない
相続人に未成年がいる
相続人に内縁の妻等、戸籍にいない人がいる
数世代にわたって名義変更を行っていない
独学で申請することに不安がある
妻や子供等の遺族で相続する一般的なケース
費用と時間をセーブしたい
パソコンやスマホを持っている
相続は色々なケースがありますが、大体のケースはWEBサービス会社のシステムにも組み込んでおり、司法書士に依頼しないと手続きができないような特殊ケースは実際そんなにありません。
先のアンケートでも48%の人は司法書士の報酬に妥当性を感じていますので、良心的な事務所も半分はあるということだと思いますが、法律で手続きの既得権益を守られているため、どうしても割高になる傾向があり、現に半数の人に料金が高いという思われる状況となっているのが実情です。
WEBサービスは2018年頃から始まったのでまだあまり認知されていませんが、定額料金で明朗な会社が多く、今後利用が増えてくるものと思われます。
相続登記に必要な戸籍、住民票、評価証明書を役所から取り寄せる手続きは、郵送でもすることができます。
役所への質問は電話でもできるので、お仕事のある方でもウェブサービスを使った相続登記が可能です
悪質業者の見分け方
Google等で検索すると「不動産登記費用定額3万円」という司法書士事務所の広告が上位表示されているのを見かけます。
人手がかかる司法書士事務所が多額の宣伝費をかけて総額3万円で対応するのは不可能で、実際に問い合わせると、遺産分割協議書は別途12万円かかり、総額はなんと15万円でした。
他にもこのような悪質な事務所、会社は多く存在しますので、よく見られる特徴をまとめます。
料金が安い根拠が不明瞭
システム化やサービス限定といった合理的な根拠がないのに、異常に安い金額をフック料金として表示
「丸投げ」「全ておまかせ」をアピール
顧客の無知につけこんで料金が不明瞭なケースが見受けられます。
URLが長い
広告業者が集客用に作った宣伝ページで、事務所のホームページは違う料金というケースがあります。
令和6年4月から相続登記が義務化され、名義変更をしていないと10万円の過料が課される可能性があります