相続不動産を名義変更する時の手続き

2022年12月19日

親が亡くなった時に行う手続きの中で、不動産の相続手続きが最難関なので、はじめから司法書士に任せるものと思い込んでいる人もいるかもしれませんが、制度上は自分でも申請は可能です。
提出が必要な書類と行うことは次のとおりです。

大項目小項目
書類収集被相続人の戸籍
被相続人の住民票
全相続人の戸籍
全相続人の住民票
全相続人の印鑑証明
固定資産評価証明書
不動産の登記簿謄本
作成書類登記申請書
遺産分割協議書
委任状
提出時登録免許税の計算
原本還付書類の複写
提出書類の綴り
法務局への提出
書類の訂正、再提出
不足書類の追加提出

ということで今回とりあげるテーマの目次は次のとおりです。

その他の遺産は関連レポートをご確認ください。

相続不動産の名義変更手続き時の収集書類

不動産相続の名義変更で集める必要がある書類の取得先は次の通りです。

書類取得先
被相続人の戸籍各市区町村
被相続人の住民票各市区町村
全相続人の戸籍各市区町村
全相続人の住民票各市区町村
全相続人の印鑑証明各市区町村/コンビニ
固定資産評価証明書各都道府県の税事務所
不動産の登記簿謄本法務局

亡くなった親名義の実家を子供達で相続する場合、亡くなった親が「被相続人」で相続する子供たちが「相続人」です。
戸籍や住民票、印鑑証明の発行については、誰しも一度は経験したことがあると思いますので、自分達相続人の書類取得は難しくありません。

戸籍や住民票は親が亡くなった後に発行したものだけが有効です。

手間がかかるのは被相続人の戸籍収集です。
相続人との関係を確認するために、生まれてから亡くなるまでの戸籍が必要です。
生まれてから亡くなるまで本籍地が変わらない人は少なく、引っ越しや結婚で転居した市区町村に本籍地を変更しますが、相続時は遡って戸籍を収集しなければなりません。
この記事を書いている時点では、戸籍は本籍地のある自治体でしか発行できませんので、次の作業を繰り返すことになります。

 A.最終の本籍地で戸籍発行を申請
 B.戸籍で転籍前の本籍地を確認
 C.転籍前の本籍地に戸籍発行を申請(以降、BとCの繰り返し)

デジタル化しているデータの筈なのに、なぜ縦割り行政で多くの国民に不便を強いているのか理解に苦しみますが、ようやく2024年からBとCの作業をしなくても済むよう改善しているとのことです。

相続人の中で既に亡くなっている人がいる場合

相続人の中で既に亡くなっている方がいれば、その子が相続人になりますので(代襲相続)、その子との関係を示すために、亡くなった相続人の戸籍も生まれてから亡くなるまで集める必要があります。

甲斐司法書士

自分で相続登記をする際には、書類作成の順番や種類、書類の有効期限に注意しましょう。
税の軽減措置を見落としたり、不要な書類まで取り寄せて結局損をしてしまった・・・ということがないように、ウェブサービスのガイダンスを参考にするのもおすすめです。

相続した不動産の名義変更時の作成資料

登記申請書

不動産の相続には「登記申請書」を作成する必要があります。
登記申請書の書き方は法務局のHPに記載されていますので、ここでは説明を省略します。
不動産登記の申請様式(法務局)

そんなに記載箇所が多い書類ではありませんが、現実的には不動産会社等に勤務して不動産登記に携わっている人以外は難易度が高いと思います。
司法書士が記載することを想定しているせいか、専門家しか知りえない不動産と税金の関連法令を把握していないと書けないことが多いことが理由です。
「登記申請書の書き方」を記載した本は簡単な概要しか記載しておらずトラップ満載ですし、「登記申請書 相続 書き方」でWEBサイトを検索しても、司法書士が複雑だということをあえて示す目的で書いているので、さらに混乱すると思います。
では司法書士に何十万円も払って依頼しなければならないか、というと必ずしもそうではありません。相続した不動産は相続した遺族が直接手続きを行えます。
どのような人が司法書士に依頼せずに名義変更ができるのか、費用を抑えて名義変更するにはどうしたら良いかのお役立ち情報は別に記載したいと思います。

遺産分割協議書

不動産の相続方法は次の3つがあります。

・遺書による相続
・遺産分割協議書による相続
・法定相続割合による相続

遺産分割協議書とは複数の相続人がいて、話し合いの上、誰が何をどの割合で決めたことを示す合意文書ですが、親の遺書に基づいて相続する場合や、相続する人が1人の場合は遺産分割協議書の作成は不要です。
預貯金や株式等も含めて全ての遺産分割協議書を作成しても良いですが、不動産の登記は不動産の相続を決めた遺産分割協議書があれば大丈夫です。
登記申請書ほどではないですが、遺産分割協議書も細かいルールがあり、司法書士に作成を頼むケースが多く、日本司法書士協会が2018年1月に行ったアンケートによると、次のとおりです。

司法書士が遺産分割協議書を作成した場合の報酬

平均:6万円~8万円、高額者10%の平均:9万円~12万円

少し宣伝になりますが、当社グループで運営する「イーライフ相続登記」というWEBサービスは、遺産分割協議書も追加費用0円で自動作成が可能です。

委任状

法務局への申請を相続人の1人が代表して行う場合に他の相続人から委任状をもらったり、司法書士を代理人にする場合に必要となります。
司法書士に依頼する場合は、司法書士から受領した書類に署名・捺印すればよいだけです。
自分達で申請する場合は、委任状も一から作成する必要がありますが、イーライフ相続登記を利用する場合は、委任状の作成機能もあるので、印刷して署名・捺印をすればOKです。

不動産名義変更の申請窓口

提出は不動産を管轄している法務局です。
法務局は会社で総務担当の人は登記簿取得等で行くと思いますが、一般の人だとちょっと縁遠い役所ですよね。
法務局は市役所と違って国の機関ですが、どの法務局でも良い訳ではありません。
相続した不動産を管轄している地区の法務局ではないと受け付けてもらえません。
例えば、筆者の実家がある北九州市の小倉南区であれば、提出の窓口は福岡法務局北九州支局で、福岡法務局には提出できません。
複数の不動産を相続した場合は、管轄が変わる場合があります。北九州市の若松にある不動産を福岡法務局北九州支局に提出しても受け付けてもらえません。若松区の窓口は福岡法務局八幡出張所になります。
普通は同じ市内だから同じ窓口と思いますが、税務署のように法務局独自の管轄エリアがありますので、法務局のホームページで調べて対応する必要があります。
法務局の管轄

なお司法書士事務所に依頼する場合、提出する法務局が増えれば支払う報酬も増えるケースがあります。
管轄する法務局が違う不動産を2つ相続し、1件の報酬が10万円であれば、20万円を支払うことになります。
ちなみにイーライフ相続登記を利用する場合は、法務局が異なり複数の申請書を作成しても、料金は変わりません。

冒頭でも述べましたが、不動産の相続は難易度が高い手続きで、手続きをしようとすると司法書士に報酬を払い、登録免許税も納付しなければなりません。
ということで名義変更をせずに済まないかと考える方もいると思いますが、不動産を売却する際は名義変更が必須ですし、名義変更が義務化されます。

法改正概要
不動産取得を知った日から3年以内に正当な理由がなく名義変更手続きをしないと10万円以下の過料
施行日
令和5年4月1日

大事な遺産はできるだけ費用を抑えて手続きを行い、損をしない情報を提供するのがテーマですので、登記申請書や遺産分割協議書等を低料金で自分でも行えるようなサービス情報は、次のレポートでお伝えします。