手続き忘れた相続!?数次相続って何だろう
手続きを忘れた相続があった、相続の手続きを進めている途中で相続人が死亡した、などの理由により、2つ以上の相続を行うことを数次相続といいます。
レアなケースではありますが、なくはないケースというのも確かです。数次相続の解説とその対策についてのお話です。
菅原道明(行政書士)
数次相続とは
繰り返しになりますが、2つ以上の相続を行うことを数次相続といいます。例えば、次のような場合は相続の手続きを2回行う必要があります。
相続の手続きを進めていたら、先代の名義の資産があることが分かった。
父の相続の手続きを進めている途中で弟が死亡した。
代襲相続との違い
似たケースで代襲相続があります。代襲相続とは、相続人が先に死亡していたため、相続人の子が相続人となることです。
わかりやすい例だと、お父さんが先に亡くなってしまったため、おじいちゃんの相続財産を孫が相続するという場合です。お父さんが先に亡くなったため、他の相続人に合わせて、その子が相続人となります。
数次相続は複数の相続、代襲相続は相続の飛び越えになります。
配偶者は必ず相続人となることが規定されていますが、代襲相続においては直系卑属か兄弟姉妹に限定されています。たとえば、先の例でみると亡くなったお父さんの配偶者は代襲相続人にはなりません。相続人の死亡日によって、数次相続か代襲相続かを判断します。
一度の手続きで済む場合もある
相続登記も当然2回の申請になりますが、中間の相続登記を省略できるケースもあります。これは中間の相続が単独相続になる場合と、遺産分割を行わない場合です。
数次相続を防ぐには
数次相続で被相続人のすぐ後に相続人が死亡するのは防ぎようがありませんが、相続の手続きを早く進めることが重要です。
一方で、相続手続きをしないうちに相続人が死亡する場合は、これは早急に進める必要があります。相続は遅れれば遅れるほど手続きが複雑になります。
すぐに影響があるわけではありませんが、必要となった時、たとえば資産を売買することになった時などは相続が終わっていないと、売買が進められません。同意をもらう相続人もさらに増えて、なにも面識のない方からハンコをもらわなければならないというケースあります。
2024年からは相続登記の義務化され、罰則も設けられます。
それ以外にも数次相続が生じることがあります。相続漏れです。
適正に相続手続きを行ったものの、過日に相続登記していない資産がわかった場合です。
自身で管理している資産はもちろん忘れることはほとんどありません。しかし、よくある例では共有財産となっている資産は忘れられがちです。当時は把握していても、代替わりで引き継がれていないこともあります。特に多いのは住宅の造成で道路を共有にしているケース、山林等の共有地、農道水路の共有地、墓地。
これらは市町村の固定資産税が非課税となることが多く、把握することが難しく、相続漏れが生じやすいケースとなります。
数次相続の遺産分割協議書の書き方
数次相続は複数の相続の手続きを進めるため、その分の遺産分割協議書を用意する必要があります。しかし、一次相続と二次相続の遺産分割についてまとめて協議し、遺産分割協議書も一つにまとめることができます。
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遺産分割協議書
被相続人
氏名 ○○○○
生年月日 ○○年○○月○○日
死亡日 平成○○年○○月○○日
最後の住所 ○○県○○市○○000番地
最後の本籍 ○○県○○市○○000番地
相続人兼被相続人
氏名 □□□□
生年月日 □□年□□月□□日
死亡日 令和□□年□□月□□日
最後の住所 □□県□□市□□000番地
最後の本籍 □□県□□市□□000番地
上記の被相続人の遺産について、相続人全員は、被相続人○○○○が平成○○年○○月○○日に死亡したことにより開始した相続につき、□□□□及び△△△△が相続人となったが、□□□□が令和□□年□□月□□日に死亡し、□□□□につき相続が開始したことから、被相続人○○○○の遺産について、○○○○相続人△△△△、○○○○相続人兼被相続人□□□□の相続人□□A子、□□B男及び□□C子が、以下のとおり遺産分割協議を行い、これに合意したことを証明する。
記
1. □□A子は、次の遺産を取得する。
(1) 所在 ○○県○○市○○
地番 000番
地目 宅地
地積 000㎡
(途中略)
上記のとおり、遺産分割協議が成立したことを証明するため本協議書を4通作成し、相続人全員の署名押印のうえ、各1通ずつ所持する。
令和 年 月 日
住所
生年月日 昭和 年 月 日
相続人
住所
生年月日 昭和 年 月 日
相続人兼被相続人□□□□の相続人
住所
生年月日 昭和 年 月 日
相続人兼被相続人□□□□の相続人
住所
生年月日 昭和 年 月 日
相続人兼被相続人□□□□の相続人
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書き方のポイントは、死亡年月日を明記して数次相続であることを明確にします。説明したとおり代襲相続と数次相続では相続人が変わりますので、注意してください。
例では□□□□が相続人であり、かつ被相続人であることから、「相続人兼被相続人」と記載し、二次相続では「相続人兼被相続人□□□□の相続人」となります。
まとめ
数次相続は仕方ない場合もありますが、相続漏れはきちんと防ぐことができます。市町村の固定資産台帳や登記済証等で資産を正しく把握しておけば、安心でしょう。
数次相続の遺産分割協議書は色々なルールがあり難しいですが、自動で作成できるWEBサービスもあるので、ご活用をおすすめします。